秩父演習林は,関東山地の荒川源流部,冷温帯の山地帯から亜高山帯に至る地形急峻な山岳地に位置しています。設立当時は面積の1/3が薪炭採取に伴う伐採後の二次林で,残りはほとんど人手の入っていない原生的な天然林でした。以来,林学の試験研究と教育フィールドを整備するため,人工林の造成と用材・薪炭材生産が行われてきましたが,同時に貴重な天然林の保護も図ってきました。その結果,現在でも面積の3割が原生的な天然林であり,冷温帯域の森林生態系に関する恰好の教育研究フィールドとして利用されています。
本アーカイブズでは,次の2つの資料をデジタル化して公開しています。
1.秩父演習林所蔵ガラス乾板(全210点)
演習林の山林や施設だけでなく,近郊の写真も含まれます。撮影年代は不明ですが,設立初期を中心に1960年頃までと思われます。ここに収録される資料は,秩父演習林の往時や歩みを窺い知る貴重な史料であるのみならず,当時の木材流送の様子など,森林技術を記録した学術資料としても大変重要です。
2.秩父演習林林相図類(全30点)
秩父演習林第4次経営案(1951)から第7次試験研究計画(1981)にかけての林相図で,中には年度別の立木払下区域や造林地明細表が示されたものもあります。この他,「林班別地名位置図」や,演習林本部に保管されていた1930年代の秩父演習林の位置図(陸地測量部発行の地形図をもとに作成)を含みます。これらの図面は,秩父演習林のかつての林相や森林管理の変遷を知る上で貴重な史料となっています。