この資料は、豊富な森林資源を伐採利用して優良な木材を生産していた飛騨地方で江戸時代末期に行われていた、「木曽式」の木材の伐採搬出・川流し・海運の様子を活写し説明している長大な絵図面です。現代人からすると劇的な作業の光景が繰り広げられています。 確実な由来は判明していませんが、江戸時代末期に現場での取材を基に執筆された『官材画譜』という書籍(当時は刊行には至らず)が元になっているという説が有力のようです。その上で、明治時代に2巻セットの絵巻物として制作され直したと思われます。 少しずつ異なるバージョンが千葉演習林のものを含めて6セット確認されているとのことで、有名なものとしては、国有林・中部森林管理局が所蔵する『木曽式伐木運材図会』が「林業遺産」に選定されています。他のセットでは各巻が『官材伐出之圖』『官材川下之圖』と題されているとのことですが、千葉演習林が所蔵しているものは10枚に分割された形で額装されており、全体のタイトルは記されていません。通常はそのうち6枚を、千葉演習林の森林博物資料館に展示しています。
参考:井上日呂登(2014)絵巻「木曽式伐木運材図会」にまつわる話.山林 1563:26-33(大日本山林会のウェブサイトから閲覧できます)。