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千葉演習林所蔵大判資料群データベース

本データベースでは、東京大学千葉演習林で所蔵している大型の紙図面を公開しています。
公開している資料は、大きく分けて4つのグループに区分できます。

(1)林業大判教材(全201点)

 この大判の図面群は、東京大学(帝国大学、東京帝国大学)で林学の講義において教材として掲示して使われていたと思われる、木材の伐採搬出や治山治水などの技術・道具・機械を図示したものです。複数の原典があるようですが、ドイツや日本の手法や道具が詳細に描かれています。
リトグラフ(版画の一種)が中心でそれなりの数が印刷されたと思われ、数カ所で類似資料が保管されているとのことですが、千葉演習林の本資料は点数が多いのが特徴です。ただし、教材として使用されなくなって久しく、図面のついての説明文がなく内容を整理把握してあるわけではありません。
多くに「農科大学図書」の印が押されています。東京帝国大学農科大学が東京帝国大学農学部に改組されたのが1919年(大正8年)ですから、主としてそれ以前に制作されたものと考えられます。明治20年代の制作ではないかとも推測されているようです。

(2)『木曽式伐木運材図会』類似図(全10点)

この資料は、豊富な森林資源を伐採利用して優良な木材を生産していた飛騨地方で江戸時代末期に行われていた、「木曽式」の木材の伐採搬出・川流し・海運の様子を活写し説明している長大な絵図面です。現代人からすると劇的な作業の光景が繰り広げられています。
確実な由来は判明していませんが、江戸時代末期に現場での取材を基に執筆された『官材画譜』という書籍(当時は刊行には至らず)が元になっているという説が有力のようです。その上で、明治時代に2巻セットの絵巻物として制作され直したと思われます。
少しずつ異なるバージョンが千葉演習林のものを含めて6セット確認されているとのことで、有名なものとしては、国有林・中部森林管理局が所蔵する『木曽式伐木運材図会』が「林業遺産」に選定されています。他のセットでは各巻が『官材伐出之圖』『官材川下之圖』と題されているとのことですが、千葉演習林が所蔵しているものは10枚に分割された形で額装されており、全体のタイトルは記されていません。通常はそのうち6枚を、千葉演習林の森林博物資料館に展示しています。

(3)近代林業解説絵図(全3点)

(2)とも少し似ていますが、森林の伐採や川流しの各工程を全13図で示してあります。それに説明文が付属しており、図面内の各ポイントを詳細説明しています。

なお、(1)~(3)については、千葉演習林の標本館(現在は森林博物資料館)に収蔵されておりますが、千葉演習林に収蔵されるに至った明確な経緯は伝わっていません。
東京大学千葉演習林は1894年に日本で最初に創設された大学演習林で、創設年から実習が行われた、林学教育の歴史的舞台です。長い歴史の中で東京のキャンパスから教材が移転されたとも推定されます。

(1)(2)参考:井上日呂登(2014)絵巻「木曽式伐木運材図会」にまつわる話.山林 1563:26-33(大日本山林会のウェブサイトから閲覧できます。)

(4)千葉演習林管理図面(全87

千葉演習林は1894年の創設以来、着実な管理運営の一環として、森林を種類・状態ごとに区分した地図である「林相図」などの図面を多数作成してきました。これらは当時の森林の状態の記録であるだけでなく、千葉演習林という単一主体が着実に実施してきた森林管理の様子を伝えるものです。また、学生実習の一環として行われる森林調査の成果の結集として作成された図面もあり、林学の歴史上も価値のある資料です。本データベースには主だったものを収録しています。

以上の資料群は高温多湿の千葉演習林で収蔵されており、保管環境と状態は良好ではありませんが、今回のデジタル化を機に活用と調査が進むことを期待しています。